
戦国時代を舞台に、天下を動かすチカラを持つという「龍の秘宝」を追い求める、盗賊、山賊、海賊が入り乱れての、愛、友情、裏切りのドラマが交錯する舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』が7月15日東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開幕する(30日まで。のち、8月7日~9日梅田芸術劇場メインホール、8月14日~16日愛知・御園座で上演)
『HiGH&LOW』はドラマ・映画・LIVE・音楽・コミックなどのメディアミックスで展開される日本テレビとLDH JAPANによるIPプロデュースカンパニー”HI-AX”が手掛ける総合エンタテインメント・プロジェクト。今年2026年は、スタートとなったドラマの放送から10周年を迎えたのを記念する「HiGH&LOW 10th ANNIVERSARY YEAR」と銘打たれた1年で、10周年記念のプロジェクトが始動している。
その一環として上演されるのがこの舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』。『HiGH&LOW』シリーズの舞台作品はこれまで、2022年の宝塚歌劇宙組公演「HiGH&LOW THE PREQUEL-」、2024年には企画プロデュース EXILE HIROによる、”戦国時代活劇”「HiGH&LOW THE 戦国」が上演されている。戦国時代でストーリーが展開する本作はこの「HiGH&LOW THE 戦国」を軸にしたアナザーストーリーで、オリジナルの完全新作となる。
そんな舞台で秘宝をめぐる四つ巴の戦いのひとつの柱となる、海賊《謝羽良一家(じゃばらいっか)》の頭領・謝羽良彩音(じゃばらあやね)を演じるのが、元宝塚雪組トップスターの彩風咲奈。『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』での退団後初ミュージカル主演を見事に演じ切った彩風が、新たな舞台への意気込みと、『シスター・アクト』を経てこの舞台に臨んだからこそ感じる発見を語ってくれた。
拳と拳で仲間を感じる魅力
──宝塚歌劇でも前日譚が上演されたり、現役生の方が「HiGH&LOW THE 戦国」に出演されたりと、縁の深い『HiGH&LOW』シリーズですが、オファーを受けた時にはいかがでしたか?
『HiGH&LOW』か!とまず思いました。宝塚で上演されたときにも、自分が出演する舞台とのタイミングの関係で観ることができなくて、これまで『HiGH&LOW』の世界観には残念ながら深く触れることができずにいたんですね。でも宝塚で上演されたバージョンに出演していた潤花さんが「すごく良い作品です!拳と拳、仲間!っていう感じです」と言ってくれて。
──あぁ、素敵な表現ですね。
そうなんです。まさにその言葉に尽きるなと。実際に台本を拝見した時にも自然と胸が熱くなったんです。近年の作品って、テレビドラマなどでもサスペンスですとか、人と人との心理戦を描いたものが結構多いじゃないですか。また、地球滅亡系というか、ゾンビなどが登場するものもたくさんありますよね。私はそういう類の作品も観ないというわけではないのですが、どうしても観るときに勇気や覚悟がいって。でもこの『HiGH&LOW』の世界観って、本当に拳と拳の絆でつながる仲間を描いていて、しかもその内容に感動できるってすごく素敵だなと思っています。
──その中で演じるお役柄が女海賊の頭領で、役名に彩風さんの「彩」の字が入った謝羽良彩音ということで、海賊、彩、とくると彩風さんをイメージして書かれたのかな?と想像しますが、お役についてはいかがですか?
それは私も思いました。他人とは思えない感じですよね(笑)。豪快で男勝りで、海賊の頭としてみんなをまとめていきつつ、秘宝一筋の女性に見えるのですけれども、ストーリーが進んでいく中で彩音の内面に触れる部分がどんどん出て来るので、男役としての経験を生かしながらも、いま、宝塚を卒業してもうすぐ2年になる自分が経験してきた部分も出せる役柄だと思っています。
──扮装ビジュアルからしてその両面が出ていらっしゃるなと。
撮影の時にはまず単純に懐かしかったんです。こういうコスチュームで、ブーツを履いて、刀を差すと、自然に懐かしいなと感じる自分が面白いなとも思って。ただやっぱり男役の時には、いま思うと結構肩肘を張って生きていたんだなと。「男役とはこうあるべきだ」というもの、宝塚の美学を絶対に壊したくない、という気持ちが自分のなかで強固にあったんですよね。でもそれが外されて外に飛び出すと、自分を戒めていたものを解き放ったと言いますか、すべてが自分次第の自由さのなかで彩音を演じられるのが、すごく楽しいですし、それが表情にも表れているのかなと思います。
──秘宝を狙う四つ巴の戦いのなかで、さきほどおっしゃったように、海賊の一団についてもお宝を狙うためで、仲間だなんて思っていない、と言い放っていた彩音が取る行動もですし、それぞれのチームの動き方も面白いですね。
チームで動くというのがまず『HiGH&LOW』の面白さだと思いますし、盗賊、山賊、海賊の三チームだけでも全くカラーが違います。そこに蒼木陣さん演じる蜂谷風馬らの「天都教」も加えた四つ巴の戦い、さらにチームに属していない人達の物語も同時に進んでいくので、その全てが絡み合った時に爆発する面白さも描かれています。殺陣も、アクションも、ダンスも歌もすごい迫力なので、何も考えずに観にきていただいても、すごくワクワクして楽しんでもらえると思います。そして、ふとした瞬間にほろっとくることもある、笑いあり涙ありの物語も存分に楽しんでいただきたいです。

自分から出るエッセンスを認められた
──エンターティメントに振り切った舞台になりそうですが、宝塚退団後初主演ミュージカルの『シスター・アクト』を経て、この現場に入っていかがですか?
私はその『シスター・アクト』の関係で、このお稽古場には遅れての参加だったので、初日はちょっとドキドキしながら行ったのですが、入ってみると“初めての現場慣れ”している自分がいました!
──それは素晴らしいですね。
やっぱり『シスター・アクト』では、宝塚を卒業して初めてミュージカルに出演するにあたって、「宝塚出身の彩風咲奈」がどう見られるのか?を、知らず知らずに気にしていた部分があったんだと思います。私自身のイメージよりももっと大きく、宝塚のイメージを意識していたと言うか。でもそこは本当に『シスター・アクト』で演じたデロリスと重なるのですが、まったく未知の世界に飛び込んで、何もかも取り払った状態で、新しい仲間ができた。それによって自分のなかで明確に何かが変わった、というものがあるわけではないのですが、やっぱり心を解放したというか、自由になった部分は確実にあって。その経験を経てこの現場に来たら、まったくの個人として「彩風咲奈です、よろしくお願いします!」という気持ちで臨むことができたんです。特に今回女性キャストがとても少なくて、ほぼ男性キャストという座組なので、稽古場の雰囲気も部活みたいなんですよ。「みんなやるぞ~!!」という。その元気さに自分も乗っかって、楽しんでやれているのかな?という感じです。
──では、こうして公演ごとに新たなカンパニーで演じることについても楽しく?
そうですね。特に今回のカンパニーに入れたことで、新たに感じたことがとても多いんです。私は宝塚でずっと学んできて、男役のお芝居、男役のダンス、男役の歌をやりきった、自分としてはやれるところまでやれた、という思いがあったのですが、『シスター・アクト』の現場に入ったら、お芝居にしろ、歌にしろ、私はこれまで何を学んできたんだろう、と思ってしまうことが正直あったんです。でもお稽古が進んでいくなかで、例えばやはり人間なので、どんなにフラットな気持ちでお芝居をしているつもりでも、日によってコンディションが違いますよね。そういう、ちょっと今日は頑張らないといけないなという日には、デロリスの表現とは少し別の、宝塚の男役としてやっていた頑張りが出てくるんです。長年やってきたものが自分を支えようとすると言いますか。それに気づいたときに、私は俳優としては本当にまだ一年生で、学び始めたばかりで、ここから彩風咲奈という一人の俳優として歩んでいくんだ、その私のなかには男役としてやりきった、自分自身としては男役を極めたと思えた日々があって、それとこれは別じゃなくて、男役として築いたものと、俳優として歩みはじめたものの両方をもって、一緒にどんどん成長していけばいいんだと思えたんです。そう思えたことで、宝塚の男役の自分を改めて肯定できたというか。ですから今回の現場では台本を読んでいると、自然と声が低くなったりしているのですが、『シスター・アクト』の時には「低く喋らないように気をつけなければ」と思っていたのに、いまは自分の中にあるもの、自然に出てくるものをちゃんと出していこうと思えているんです。その自分から出てくるエッセンスを認められているのが、今回のカンパニーですごく感じていることです。その上で、やっぱり彩音という人物の内面を描く部分では、単にやってきた表現を使うのではなくて、周りの方たちとの芝居のなかから生まれてくるもの、特に台本のなかで、山田健登さんが演じる霧生楓とのお芝居から引き出されてくるものを大切にしたいです。

想像以上の熱い舞台を楽しんで欲しい
──お話を伺っていると『シスター・アクト』から舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』へというのが、彩風さんにとってとてもいい流れなんだなと感じますが、その一つひとつの舞台を経験していくなかで、新たにやってみたいことなどは見えてきたりもしていますか?
『シスター・アクト』で森公美子さんをはじめ、本当に素晴らしいキャリアをお持ちの方々とご一緒させていただきましたが、そのなかに保坂知寿さんがいらして。知寿さんって劇団四季の大スターだった方ですよね。そのすごいオーラとご経験がありつつ、シスター・メアリー・ラザールスというお役への命の注ぎ方、おひとりでバン!と前に出られた時と、シスターたちみんなと一緒にいる時のさじ加減が本当に素晴らしくて。確かに大スターの知寿さんが演じているのですが、大勢のシスターの中の一人にも一瞬でなられる。その舞台での在り方を心から素敵だと思いましたので、私も知寿さんのように、これから色々なお役を経験して、極めていきたいという目標ができました。
──素敵な視点ですね。確かに元宝塚、元劇団四季の大スターさんたちが並び立った豪華な舞台でしたし、彩風さんの真ん中オーラにもすごいものがありました!
それはツレさん(鳳蘭の愛称)です!カーテンコールで登場して手を広げられた瞬間の輝きが最高でした!
──鳳さんももちろんですが、彩風さんのオーラも本物だなぁと思いましたので、今回の彩音をはじめ、いまおっしゃったように様々なお役が拝見できるのが楽しみですが、もうひとつ『THE ALUCARD SHOW』へのご出演も発表になっていますね。
この舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』ともまた全く違うテイストの作品になると思うので楽しみです。松下優也さんとご一緒させていただきますが、先日『BOOP! The Musical』を拝見しましたし、その前に『クワイエットルームにようこそ The Musical』も観させてもらっていて、松下さんのお芝居やお歌がすごく好きで、男役の時に観ていたら絶対に参考にしただろうなと思う方なので、共演させていただけることがすごく楽しみですね。
──本当に大活躍中の方なので、彩風さんとの共演にも期待が膨らみますが、まずはこの舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』を心待ちにされている方々にメッセージをいただけますか?
これまでも本当に熱い作品になりそうです、とお話してきましたが、お稽古に入ったらそんなものではなく、想像以上の熱い舞台です。殺陣はもちろんですし、アクションも豪快で、私も今まで挑戦したことがないことに次々と挑戦させていただいております。みんなで歌う主題歌もそうですし、それぞれのテーマ曲、ダンス、すべてに魅力があって、ダンサーチームの男性たちも一緒に盛り上げてくれていますので、そうしたパフォーマンスを見るだけでも大きくご満足いただけると思います。そこにプラスして、ストーリー展開も豊かで、愛あり、友情あり、裏切りもある盛沢山な舞台になっていますし、しかも舞台だけでお芝居が進んでいくのではなくて、実は客席の皆様にもストーリーの一部になってもらう、参加していただくという演出もありますので、是非何回も観ていただいて各チームの個性を堪能していただきたいです。私としてはもちろん皆様に海賊派になっていただきたいですが(笑)、盗賊、山賊、それぞれの推しを見つけるもよし、単純にダンスや歌を楽しんでいただくもよしと、色々な楽しみ方をしていただける作品になっていますので、是非、熱い夏を一緒に過ごしていただけたらと思います。劇場でお待ちしております!
Summer Special Question
この夏欲しいものはありますか?
ハンディファンが欲しいです。楽屋用に、壁に掛けられるものはいただいて使わせてもらっているのですが、皆さんが街中でお持ちのハンディタイプは、かなり小さなサイズでも風量がちゃんとあると伺ったので、この夏を乗り切るために是非欲しいです。

【公演データ】
舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』
脚本◇平沼紀久/渡辺啓
演出◇平松紀久
出演◇小野塚勇人 笹森裕貴 彩風咲奈
山田健登 蒼木陣 小澤竜心
八木将康 うえきやサトシ 土井ケイト 夏川椎菜 佐藤日向
伊勢大貴 納谷健
川久保拓司 伊達暁 伊藤正之 ほか
●7月15日~30日◎東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
●8月7日~9日◎大阪・梅田芸術劇場メインホール
●8月14日~16日◎愛知・御園座
公式サイトhttps://www.umegei.com/high-low-sengoku-gaiden2026/
チケットお求めの詳細 https://www.umegei.com/high-low-sengoku-gaiden2026/schedule.html
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
©HI-AX/©2023 HiGH&LOW THE 戦国 製作委員会
(取材・文/橘涼香 撮影/吉原朱美)
















