
長身で爽やかで、かつ様々な役柄が演じられる男役スターとして、宝塚歌劇団花組、星組で活躍した綺城ひか理が、5月3日(日)めぐろパーシモンホール 小ホールで綺城ひか理CONCERT2026「Take it Easy vol.2」を開催する(1st 15:00開演/2nd 18:30開演)。
自分が歌いたい、そして聞いてくださる方に楽しんで欲しい曲を集めたというコンサートを前にした綺城に、ステージに臨む想い。また全日程出演を果たした『エリザベート TAKARAZUKA 30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』で得たもの、また宝塚退団後の日々について語ってもらった。
歌で世界をめぐるコーナーも用意されたコンサート
──宝塚退団後第二回目となるコンサート『Take it Easy Vol.2』のお話からお伺いしたいのですが、こちらは退団後初のディナーショーのPART2的な位置づけだと伺っています。
まず『Take it Easy』という言葉は、私が宝塚歌劇団在団中に、花組の同期生4人でパーカーを作ろうという話になった時に、何か英語で「座右の銘」みたいなものをパーカーの背中に入れられたらいいよね?自分たちに合うものにしようと、みんなで一生懸命調べて「これだ!」となったものなんです。「Take it Easy=気楽に行こうぜ!」という意味なのですが、同期としてもそうですし、すごく私自身のテンションに合うなと思って、とても大事にしている言葉だったんです。退団後の初ディナーショーのタイトルを考えた時にも「これしかない!」と、いきなり使ってしまったので「同期の皆さんごめんなさい」みたいな感じではあるんですけど(笑)。
前回はやはりディナーショーだったということもあって、ちょっと敷居が高いと感じられた方や、初対面の方たちとテープルを囲んでお食事をするということのハードルが高いと思われた方もいらっしゃったと思うんですね。当時も、ディナーショーでありながら、お家で、一人で映画を観ている時のように、気楽に感情を動かしてください、という思いを込めて開催したのですが、今回は、より気楽に楽しんでいただきたいと思い、コンサート形式でやらせていただくことにしました。ありがたいことに「待っていました!」というお声も多くいただいて。もちろんディナーショーにオシャレをして参加する、その華やかな空間も楽しさのひとつだと思うのですが、今回はコンサートホールでということで、お仕事終わりにそのまま駆け込んでくださっても大歓迎です!というタイトル通りの気楽さを出していきながらやりたいと思っています。
──いまお話いただける範囲で、どのような内容なになるのか教えていただけますか?
内容としては、私が歌いたい歌を、私が共に演奏したい人達と演奏し、皆様に聞いていただく、という形です。『Take it Easy』は、私がやりたいことにフォーカスして、それを皆様に楽しんでいただけるものにしていく、というコンセプトなので、まぁ私が着たいものを着て、歌いたいものを歌うという、ある意味大変ワガママな企画なので(笑)。
──でもファンの方々にとっては、いまの綺城さんのお好きなもの、興味関心を寄せていらっしゃるものを知ることができるというのも、ひとつの醍醐味だと思いますが、ではセットリストもご自身のお好きなものをチョイスしていったという感じでしょうか?前回出し尽くしたので、新たなものを増やさなければ、というSNSでのコメントも拝見しましたが。
いくつかの軸となる曲をまず土台にして、そこにセットリストを組んでいくという形なのですが、前回レパートリーの大半をお聞きいただいてしまったので(笑)今はインプットに時間をかけています。
音楽監督は、前回も務めてくださった麓朝光さんに引き続きお願いしています。どんな曲も弾いてくださるのですが、本職はタンゴピアニストの方で、前回のトークコーナーの時に、お客様から「麓さんから見て、綺城さんにはどんなタンゴが似合うと思いますか?」というご質問をいただいたんです。そうしたら麓さんが「『想いの届く日』がピッタリですね」とおっしゃって。スペイン語で書かれた歌い出しの歌詞が「Acaricia」という単語からはじまっていて、私の本名が「あかり」なので、これは歌わなければいけない、というところからまず入りました。
アルゼンチンタンゴの楽曲を、コンサートのセットリストのなかにどう自然に入れていくか、と考え、ゴールデンウィークでもありますし「世界旅行のイメージで、各国の有名な曲を歌えたらいいね」というところからスタートしています。全体のコンセプトではなく、世界旅行をテーマにしたコーナーがあります、ということなのですが、歌で綴る世界の旅を楽しんでいただきたいなと思っています。
──それは本当に季節にもピッタリのテーマで素敵ですが、その麓さんをはじめとしたバンドメンバーも、前回と同じ方々ということで、皆さんとのコミュニケーションも十分に?
『エリザベート TAKARAZUKA 30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』の期間に、一度皆さんと集まって決起集会を開きました。「はじめまして」の方々とお仕事をさせていただくのも大きな刺激になって大好きなのですが、私は根がすごい人見知りで、コミュニケーションをとることがあまり得意ではないタイプなんですね。でも『Take it Easy』のバンドメンバーの方たちは、そういう私の口を軽やかに開かせてくれるんです。舞台を一緒に創る時間を共有した皆さんと、またご一緒にできるというのは、シリーズ化していくものの醍醐味でもあると思うので、チームワークも武器にやっていけたらいいなと思っています。
──それはとても頼もしいですね。そして先ほど「着たいものを着る」というお話もされましたが、やはりSNSでドレスの試着をされている画像を公開されていらっしゃいます。豪華なドレス姿にも期待できそうですか?
どうでしょう~(笑)。私は宝塚の男役でしたから、ずっとメンズライクな恰好をしてきたのですが、どうやら実は可愛い恰好をするのがすごく好きみたいなところがあってですね(笑)。
──それも素敵じゃないですか!
いえただ、それがやっぱりお客様のニーズには合っていないのかな、というところとのせめぎ合いがありまして(笑)。確かに「着たいものを着る」と申し上げましたが、さすがにちょっと度を越えないように気をつけねばならない!というところで落ち着いております(笑)。
──では、カッコいい綺城さんと可愛い、ゴージャスな綺城さんのギャップの魅力を、拝見できるかも?というところでしょうか?
そうなれるといいんですけど「こういう恰好はお金を払ってまで見たくないです」と思われたらすぐメッセージをいただけたらと思います!(笑)

その日、その回の空気に命を賭けたガラ・コンサート
──そんなコンサートへの期待も高まりますが、先日大盛況で終えられた『エリザベート TAKARAZUKA 30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』には全日程ご出演になりました。いま振り返ってあのご経験はいかがでしたか?
正直のところ、はじめは少し出演を迷った部分もあったんです。宝塚で男役はやりきった!という思いがあって退団してから、お話をいただくまでにあまり間がなかったので。でもやっぱり『エリザベート』という作品は、自分にとってもすごく思い出のあるものでしたし、これほど名だたるスターの皆様とご一緒できる機会なんてそうそうないぞと思って、勇気を出して参加させていただくことにしました。私が男役の最下級生だったこともあって、まさに初心を思い出しました。
宝塚を卒業するということは、自分が全力で取り組んできたものがなくなるわけですから、今後どうしていけばいいのかわからない、という状態に多かれ少なかれ誰もが一度はなると思うんですね。そのまま舞台人としての活動を続けていかれる方もいらっしゃいますが、全員ができることではないし、それを自分がやりたいのか?という問題もあります。ですから私自身、退団して1年間、すごく色々なことを考えた期間だったので、ちょうど1年経った頃にガラ・コンサートに出させていただいたことは、大きな経験になりました。
トップスターさんはもちろんですし、プリンシパルの皆さん、そして全日程出演メンバーもそうですけれども、やっぱり皆さんご卒業されてお一人おひとりが全く違う道を歩まれて、その経験を元にもう一度ここに集合している。その厚みというか、皆さんがきっとそれぞれに闘い、苦しんだ時間もあっただろう日々を越えて、何十人が集結するパワーみたいなものをすごく感じました。もちろん宝塚にいる時も全身全霊で前進しているんですけど、当時は、ひとつのことを一生懸命やる、「純粋さ」が最大の武器でもあります。でも宝塚歌劇団という大きな場を離れると、舞台に出られることが保証されているわけではなく、人知れぬ努力を重ねてここに来ている方たくさんいらっしゃる。誰もが決して口にはしないけれども、抱えて来たもの、乗り越えてきたものが舞台上に噴出するのが、ガラ・コンサートのパワーなんだ、すごいなと感じました。
──それこそが、OG公演だけが持つ輝きなんだろうなと、得心の行くお話ですが、そのなかで様々なお役をされましたが、中心となったハンガリーの革命家シュテファン・カロリィ役は、2014年花組上演時に新人公演で演じた役どころですね。コンサートバージョンとはまた表現も違うと思いますが、この年月を経て再び取り組まれていかがでしたか?
それが実は、正直のところ新人公演の記憶というのが欠片もないんです。
──そうだったんですね!
私、あまり過去を振り返り、回顧して話すことがないんですよね。記憶って話すことで定着するじゃないですか。その思い出話をする機会があまりないまま来てしまったので。
──それだけ目の前に次々とやることがあったのだろうなと思いますが、では全く新鮮な気持ちで取り組まれた?
そうですね。これがもう少し上級生になって、例えば退団する直前に演じた役柄などでしたら、また違ったと思うのですが。
昨年、ディナーショーに向けて女性としての歌い方も色々と研究した上で、また男役として歌うことに挑戦できたので、新たなものを見つけたいと思いながら日々取り組んでいました。毎日、あれだけの量の楽曲を歌える機会はなかなか一人では設けられないので、貴重な期間になりました。革命家以外にも、色々な役柄で歌わせていただいたので、様々な歌唱法を試すこともできて、とてもありがたかったです。
──革命家チームは特にトートとの絡みも多かったですが、歴代のトート閣下とご一緒されていかがでしたか?
とても楽しかったです。トートをはじめとする、プリンシパルと呼ばれるスターの皆さんの中には、ご自身の出演日ギリギリに合流されて、本番までほとんど時間がないという方もいらっしゃいました。短い期間のリハーサルで多くの段取りを体に落とし込まれた上で、舞台に立たれた時のお一人おひとりが放たれるオーラや、最初から最後まで一本の芯を通して舞台で存在されている空気感は、本当にすごいものがありました。皆さん、同じ役であっても、居方や、舞台での動き方も違われたので、私たちとしても「はい、ここで待っていればトート閣下が来ます」ではなくて、毎日、毎回新鮮に、その方の演じるトート閣下に合わせてやっていく。如何にその空気にきちんと対応できるか?というところに、命を賭けていました。
自分が人生の主人公になって
──毎日が奇跡のようだな、と思える舞台が創られる過程の一端を感じられてとても嬉しいお話です。30年間に登場されたスターさんたちが集まっているので、年代の広いファンの方々も客席に多くいらっしゃいましたから、「革命家にまるで現役生のような、すごく素敵な方がいる、どなた?」というご質問を私もずんぶんいただいたんですよ。
本当ですか?恐縮です。
──そうして綺城さんをお知りになった方たちも、このコンサート『Take it Easy』に注目していらっしゃると思いますが、『ガラ・コンサート』も経た、宝塚退団後の1年間は、どんな時間でしたか?
色々考えた時間でした。世に放たれてみて、今までいかに劇団に守られていたか、「宝塚」という看板が、自分を「綺城ひか理」でいさせてくれていたのかが、とてもよくわかりました。これまで舞台に立つ為にだけ努力を重ねてきましたから、それ以外のことは何もできないので、本当にどうやって生きていけばいいのだろう、とすごく悩みもしました。
私は特に舞台の上でも、主役の人に対して自分がどう居ればいいのか?をすごく意識していたんです。学年があがっていくに連れて、主役の人の傍にいる役をさせていただいてきましたが、それでもやっぱりその主役の人に対して、自分がどう在るべきか?と考えていて、真ん中にいる人を鏡にして、そこに映る自分は?を計って存在してきたんです。その主役の人がいなくなってしまった。人生の主役が「自分」になったことで、誰に合わせたらいいのかがわからなくなってしまったんです。
──チームファーストをそこまで徹底されていたんですね。
はい、あくまで私の場合ですし、それが必ずしも良いことだったとも思っていません。「自分を軸にする」という視点を持った上で、改めて宝塚を客席から観ていると、真ん中にいる立ち位置ではなくても、ちゃんと自分を確立している人を何人も見つけるようになって、いまは自然にそういう方に目が行くようになりました。見方が変わりましたし、すごいなと尊敬もしていて。
──では、綺城さんにとっては、ご自身を主役にした人生をいま生き始めているという感覚でしょうか?
ちょっとまだそこまで行けていなくて、そうしなければいけないのはわかっているんですけど、そのためにはどうしたらいいのかはちょっとまだ手探り状態です。
──本来どなたでも人生の主人公は自分ですけれど、確かにお仕事だけではなくて、家庭のなかでもそこに悩む人はたくさんいますから、ゆっくりでいいのでは?とも思いますが、その為にも色々なことをやってみようというお気持ちでしょうか?
そうですね。先日礼真琴さんのご卒業後のコンサート『Flare』を拝見してびっくりしたんです。礼さんって完璧じゃないですか。歌も、ダンスもお芝居もなんでもお出来になる。そんなすごい方が、まだ新しいことに挑戦されるのかと。しかも客席からはその新たな挑戦も完璧に映っているのですが、ご自身は「初めてのことで難しい」とおっしゃりながら、取り組んでいらっしゃる。本当に謙虚であれだけお出来になっても、努力をし続けられる方なのも重々承知しているだけに、新たなことに挑まれている姿が眩しすぎて。私も、もっともっと新しいことをやらなきゃいけないんだと思いましたし、やっぱり新しいことに挑戦する、それ自体が輝いて見えるんだなということを、すごく教えていただけたので、私も色々なことに挑戦していきたいです。
──では、今後こんなことをやってみたいというビジョンや夢はありますか?
それもいま探しているのですが、ひとつだけ今回のコンサートで初めて作詞に挑戦しているんです。
──それは素晴らしいですね!オリジナル曲ということですよね?
とても苦労しているので、やるって言わなければ良かった、と思わなくもないのですが(笑)、私は基本的に限られた文字数で思いを伝えることがとても好きなんですよ。ですから自分がいま感じること、お客様に伝えたいことを、言葉にしていこうとしています。すごく大変なんですけど、共感していただけるものに、更に自分への応援歌になるようなものになったらいいなと思います。こうして何かに取り組んでみると、続けている方たちのことを本当にすごいなと尊敬しますし、私も何をやるにしても器用なやり方はなかなかできないとは思うのですが、根性だけはあるので、積み重ねていって、少しずつ根性だけに頼らない方法も見つけていけたらいいなと思っています。
──お芝居を続けたいというお気持ちはどうですか?
機会がいただけるなら是非やってみたいと思っています。ただ、さっきも言いましたが私は可愛い恰好が案外好きなんですが、麓さんに「絶対にそっちじゃない!日本や韓国のアイドルにもなかなかいないような、中性的な魅力があるんだから、それを活かすべき」と言われていて。おそらく、コンサートまでは、麓さんが誰よりも私のプロデュースについて考えてくださる時間の長い方なので(笑)、ご意見も参考にしつつ、需要があるのならば挑戦させていだたきたいと思っています。
──絶対にありますから、そんな未来も楽しみにしつつ、まずこのコンサート『Take it Easy Vol.2』に期待されている方たちにメッセージをいただけますか?
ゴールデンウィークに予定を空けてくださっている方々、また空けられないかと調整してくださっている方々に、まずは心からありがとうございますとお伝えしたいです。それだけに絶対に愉しいものにいなければ!という責任感も強いです。もちろん歌も最大限頑張りますが、タイトル通りにまず自分もおおらかに楽しんでステージに立てたらいいなと思っています。初挑戦のドレス姿もあるかも?というところで、是非楽しみにしてお出かけください。お待ちしています!
(取材・文/橘涼香)

【公演情報】
綺城ひか理CONCERT2026
Take it Easy Vol.2
日時:2026年5月3日(日)
時間:1st 15:00開演/2nd 18:30開演
会場:めぐろパーシモンホール 小ホール
出演:綺城ひか理
音楽監督:麓朝光
料金:指定席 10,000円(税込)
主催:ERIZUN
チケットのお申し込み
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