
2023年帝国劇場で初の舞台化がなされた『キングダム』。紀元前の、苛烈な戦乱の中にある中国・春秋戦国時代を生きる戦災孤児の少年・信と、のちの始皇帝となる若き秦王・嬴政(えいせい)。たった2人の少年が、史上初の中華統一を目指す様を描いた原奏久の大人気コミックの舞台化は、生身の人間同士が目の前でぶつかりあう、演劇ならではの臨場感に、壮大な美術と、生のオーケストラ演奏というスケール感が舞台エンターティメントの醍醐味を強烈に印象づけた。
そんな舞台『キングダム』待望の続編となる、舞台『キングダムⅡ-継承-』が、8月9日東京建物Brillia HALLで開幕する(9月13日まで。のち、9月21日~29日大阪・新歌舞伎座、10月6日~13日、福岡・博多座で上演)。
信が、いつか天下の大将軍になる、との夢を分かちあっていた唯一無二の友との別れを経て、秦王・嬴政に協力し、王弟から玉座を奪還するまでの「王都奪還編」で幕をあけた舞台『キングダム』は、今回その先の物語、原作漫画唯一無二のエピソードである、中華にその名を轟かせる、秦国の大将軍・王騎が、戦いの中で壮絶な死を遂げる「馬陽防衛編」を描く。王騎を演じるミュージカル界の帝王・山口祐一郎が、次代を担う若きエース、三浦宏規と高野洸に「将軍が見る景色」を伝える、作品のドラマに、現実のドラマが鏡写しになったかのような、新たな舞台の幕あけがいよいよ間近に迫ってきた。
そんな新作の稽古が進む7月14日、帝国劇場でも数多く演じられてきた「フランス革命記念日」に、公開稽古と全メインキャストの会見が行われ、都内稽古場で白熱した時間が展開された。

この日は、例年よりは酷暑がくるのが遅かった東京に、『キングダム』の熱気が真夏を呼び込んだかのように、一気に気温が上昇。真っ白に感じられる日差しが照り付けるなか、セットが組まれた稽古場は、もちろん冷房が効いているものの、これからはじまる公開稽古を前にウォーミングアップするキャストたちや、詰めかけた報道陣の熱気で、外の暑さが持ち込まれた趣。
そんななか、まずメインキャスト全員揃っての会見が行われ、主人公・信(しん)役のWキャスト三浦宏規と高野洸。原作屈指の人気キャラクターの一人、千年を超える歴史を持つ伝説の暗殺一族“蚩尤(しゆう)”の一人である羌瘣(きょうかい)役の山本千尋。王騎に立ちはだかる龐煖(ほうけん)役のWキャストの東啓介と章平。信と共に歩む為、軍師を目指すことになる河了貂(かりょうてん)役の華優希。信の仲間、尾平(びへい)役の元木聖也。河了貂と共に学ぶことになる蒙毅(もうき)役の竹内將人。羌瘣の幼馴染で姉同様に育った羌象(きょうしょう)役の清水葉月。「馬陽の戦い」で王騎の副将を務める蒙武(もうぶ)役をWキャストで務める渡辺大と(東京・大阪公演)、飯作雄太郎(大阪・福岡公演)。秦の六大将軍の一人で王騎と将来の約束を交わしていた摎(きょう)役の大塚千弘。同じく秦国六大将軍の一人で、王騎率いる王騎軍の副官・騰(とう)役の石川禅。そして、今作の鍵を握る王騎(おうき)役の山口祐一郎が登壇。舞台『キングダムⅡ-継承-』への意気込み、稽古場の様子、作品の見どころなどを語った。
【登壇者挨拶】

三浦 約3年前に、舞台『キングダム』として初演され、今回は『キングダムII ─継承─』ということで、素敵なキャストが集まりました。祐様(山口)の王騎将軍の物語がクライマックスで、とんでもないことになっております。『キングダム』を知っている方はもちろん、まだご覧になったことのない方にも祐様の雄姿を御覧いただきたいと思います(山口が立ち上がってお辞儀をするので、三浦も返して)精一杯頑張りますので、皆様よろしくお願い致します。

高野 初日が近づいてきて、残りの稽古に気合いが入ってきています。前作に引き続く物語ですが、それぞれが大切な人からの思いを継承して戦場へ向かいます。全員のカッコよさに注目していただきたいです!頑張ります!

山本 私は10年前に一度羌瘣役を演じているのですが(※『キングダム』連載10周年特別動画にて)再び演じられることが本当に夢のようです。稽古では皆さんの実力に圧倒される日々ですが、こんなに学べる環境はないと幸せに感じております。どうぞ最後までよろしくお願い致します。

東 『キングダム』は、漫画、アニメ、映画、そして舞台と、多くの方に愛されてきた作品です。舞台版『キングダムⅡ-継承-』も素晴らしいものになると感じていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

章平 稽古を見ていると、本当にたくさんのキャラクター、キャストのそれぞれにフォーカスが当たっています。それが「継承」というタイトルにすごくフィットした作品だなと思うので、それを皆様にお届けできるように頑張ります。

華 3年前から引き続き河了貂を演じさせていただきます。河了貂として仲間とともに前へ進む姿をお届けできたらと思っています。新たな戦い、新たなキャラクターも登場しますので、今年も熱い『キングダム』を楽しんでいたただけたらと思います。

元木 僕も前回に引き続き出演させていただきますが、前作ではバジオウ役でしたが、今作では尾平として信を支えられるように頑張りたいです。『キングダム』といえば殺陣が見どころですが、今回も見応えのあるアクションになっていますので是非、期待していてください。

竹内 見逃せないシーンが多くて、展開が早くて、本当にハイスピードな舞台です。ご来場くださる皆様にも、その瞬間、瞬間に目を凝らして楽しんでいただきたいです。蒙毅役は名家の三男坊のエリートなので、品格と知性を大切に演じたいと思います。

清水 舞台『キングダム』という前作の大きな土台があるなか、新たに参加できる喜びとプレッシャーを感じております。私の役は(山本)千尋さん演じる羌瘣との場面がほとんどなので、千尋さんから受け取ったものを、愛情を込めて返していきたいです。

渡辺 『キングダム』という大きなスケールの作品に出演できることが光栄です。そのスケールに負けないよう、蒙武として舞台で大暴れしたいと思います。是非劇場にいらして下さい!

飯作 前作に引き続いて出演できること、今作では蒙武を演じられることを光栄に思っています。蒙武役としては大阪公演からの参加ですが、大さんの思いも継承し、福岡まで皆さんと一緒に作っていきたいと思います。

大塚 皆さんが本当にすごすぎて、毎日稽古場で拍手、拍手という日々です。私はこれまで幸薄い庶民の役が多かったので(笑)、六大将軍の一人という強い役に試行錯誤しながら演じさせていただいております。またこうして、山口さんの相手役としてできることを幸せに思っています。是非劇場に足をお運びください。

石川 騰役をやらせていただきますが、大変です。騰という人物は「四半眼」と呼ばれる独特の目元で、原作ではとにかく無表情で心が読めないんですね。それをどう演じればいいのか頭を抱えていますが、きっと本能で生きる人物なのだろうなと。台詞は歌え、歌は語れと言いますが、これは心と心で語り合わなければならないと思っています。皆様の殺陣が本当にすごくて、是非、是非それを御覧いただければと思います。紀元前の中国大陸でいまの我々とはまったく違う死生観を生きた人たちのお話を通して、今の日本に元気を届けられればと思っております。命がけの稽古です。よろしくお願いします。

山口 (石川)禅さんが言っていらしたように、今回は本当に命がけの稽古です。演出の山田(和也)さんからも、普段のお稽古では「頑張ってください」と励ましていだたくのですが、今回は「大丈夫ですか?」「お水を飲んでください」と労っていただいています。大塚千弘さんとは最初に会ったときには、彼女は高校生だったんです。僕と同い年のお父様に「うちの娘をお願いします」と言われたことを覚えています。この作品のお稽古が始まった時に「お父様はどうされていますか」と尋ねたところ「仕事をやめて引退しています」と。その言葉がグサッときた稽古のスタートでした(笑)。稽古場のお父さんと言ってきましたが、すみません、孫です(笑)。そんな孫のような若い世代のキャストと一緒に作品を作っています(笑)。そんな世代を超えた素敵な時間を、ぜひ劇場で感じていただけたら嬉しいです。
【質疑応答】

──三浦さん、稽古を重ねてきて感じる、今のカンパニーの魅力を教えてください。
三浦 前作で共に汗をかき、命がけの戦いを経験した皆さんとは、だからこそ、一つひとつの言葉に重みが増していると感じています。王騎将軍役の祐様が、最後に言葉で皆を鼓舞する。そのとき役としてだけでなく、一人の人間としても祐様に「ついて行きます!」という気持ちが強く湧き上がるのは続編だからこそだなと。まだまだ大変ですが、前作であれだけの死線をくぐり抜けた我々なら、今回も乗り越えられると思っています。新しく参加された皆さんも、とてつもないエネルギーを持っていらして。僕たちが「もっと頑張らなければ」と思わせてもらえるくらい刺激を受けていますし、羌瘣役の千尋さんの殺陣には、教えてほしいと思うほど、一つひとつの動きに説得力があります。
──高野さん、前作との違いをどう感じていますか?
高野 前作は信としてほとんどすべての場面に関わっていましたが、今回はさまざまな場所で物語が同時に進んでいきます。これから全員揃う稽古も増えていきますし、本当に素敵な大好きなキャストの方々ばかりなので、たくさんコミュニケーションを取りながら最後まで走り抜けたいです。山本さんからは中国武術のお話もよく聞かせていただいています。首や背中を反らせる独特の動きなどで、羌瘣らしさをちょくちょく出してくれるのが、すごいなと思っています。

──山本さん、説得力のある羌瘣だというお話ですが。
山本 そんなことはなくて、まだ毎日どうしたらいいのかと悩んでいます。正解が見つかったという感覚はまだありません。でも今回の立ち回りは、それぞれのキャラクターが際立つように作ってくださっていますので、そのキャラクターとしてどう演じるかが、技術以上に一番大切だと思っています。同世代の方から先輩方まで、皆様表現者でいらっしゃるので、本当にさまざまな表現を間近で見られる環境は、共演者でありながら特等席に座っているような気持ちです。毎日勉強させていただいています。

──稽古で特に印象に残っているエピソード、ご自身のことだけでなく、周りの方々についてなど、それぞれ教えてください(司会から「ではお座りの順で」と促されて)
大塚 私は皆さんに比べると少ない方ですが、殺陣があるんですね。その少ない殺陣でも翌日、子どもを抱っこできないくらいの筋肉痛になりまして(笑)。「これが『キングダム』の稽古場なんだ」と身をもって実感しました。筋トレをして頑張ろうと思います。
渡辺 やはり殺陣ですね。僕は初めて諸鍛冶裕太さんに立ち回りをつけていただいていますが、蒙武は舞台で一番大きな武器の「大錘(だいすい)」を持つ役なんです。本当にたくさん、色々な「手」(殺陣の型)をつけてくださったので、最初はとても緊張していましたが、周りの皆さんに助けていただきながら取り組んでいます。
竹内 稽古を見ていてうるっとしたのが、王騎が摎を思い出す芝居でした。祐様と禅さんの台詞のひとつひとつの発し方、お二人が言葉を交わすだけで心に響いてくるんですよね。摎を演じる千弘さんとの関係性もあると思いますが、祐様と禅さんお二人の人間力や愛の深さ、俳優としてのすごさを目の当たりにした稽古でした(山口が「来て、来て」と石川を促して、二人で竹内にお辞儀)
石川 すみません、気を遣っていただいて!
竹内 とんでもないです!
華 たくさんあるのですが、ひとつあげるとすると、羌瘣役の千尋ちゃんの首の可動域です。「人間の首って、そこまで動くの?」と思うくらいなんです。首だけではなく、身体全体の使い方がすごくて、毎回目が離せません。
東 僕自身の話になってしまうのですが、龐煖の武器がとにかく大きくて重いんです。今の稽古場のサイズからも「ここで本当にできるのかな」と思うくらいで、皆さんをなぎ倒しています。章平さんと一緒に稽古をしたときには、武器が折れてしまったこともあるほど、思いっきり振り回していますので、本番までに体力面も含めて、しっかり仕上げていきたいと思っています。
山口 実は、今日(7月14日)は、東さんのお誕生日なんです(全員から拍手)。こうして皆様から祝福される、若い皆さんの人生の節目を一緒に迎えられるのが俳優って幸せだなと。稽古場でこれから未来を築き上げていく皆さんの表情を見ているだけでも「今日まで生きてきてよかったな」と思えるくらい、本当に素敵なカンパニーなんです。このエネルギーを、そのまま劇場で皆さんにも感じていただけたら嬉しいですね。きっと元気になっていただけると思います。
三浦 今回、舞台に馬が登場するのですが、結構大きな馬なんです。祐様の王騎将軍と二人乗りをするシーンがあるのですが、僕らの体重で馬が前のめりになってしまって顔が見えなくなってしまう。そこで祐様が「後ろへ(重心を)移そう」と言ってくださって、二人で馬の上でこうした(両手をあげる)のが、すごく楽しかったです(笑)。

高野 僕は祐様のお人柄ですね。祐様は稽古場に早く入られているのですが、僕たちが稽古場に入ると、誰よりも大きな声で「おはよう!」と迎えてくださるんです。この背中を見習っていきたいと自然と思う。それが王騎将軍そのものだと思いますし、役として信と王騎の関係性にもつながっています。
山本 笑いのたえない稽古場なのが素晴らしいと思いつつ、それぞれが特別な技術を持った方ばかりなんです。三浦さんのバレエ、元木さんのパルクール、そしてミュージカルで培われた皆さんの発声や表現力。それぞれの専門性を見られることで、映像作品ではなかなか味わえない刺激を毎日受けて幸せです。
章平 龐煖は、王騎という存在だけを目的として、見据えて生きている。王騎は、それほど大きな人物です。そんな敵同士の役柄ですが、山口さんは毎朝、必ずご自身から握手をしてくださって、「ファイト」と声を掛けてくださるんです。本当に素敵な方です。ご一緒できることを光栄に思いながら稽古をしています。
元木 今回の舞台ならではの見どころが「馬上戦」です。映画では本物の馬ですが、舞台ではどう表現するだろうと、僕たち自身も楽しみにしていました。稽古場で馬が出てきて、王騎と龐煖という大柄な二人が馬に乗り、さらに長大な武器を手に戦う姿は、この稽古場で見ても圧巻なので、音楽や照明、衣裳が加わったところにご期待ください。
清水 私は羌瘣と演じていて、ダブルキャストならではの面白さを感じています。三浦さん演じる信と芝居をしたあとの羌瘣と、高野さん演じる信と芝居をしたあとの羌瘣とでは、明らかに私が受け取るものが全然違うんです。その違いが作品にどう表れるのか、お客様にも楽しんでいただけるのではないかと思っています。
飯作 個人的な話なのですが、祐様と禅さんとは『レイディ・ベス』でご一緒させていただいていて、お二人は「舞台でどうやって戦うんだろう」とお話されていました。でも実際に稽古場へ来ると、お二人がすごい勢いで戦っていらっしゃるので、自分も負けないように頑張ろうという気持ちで毎日稽古しています。

石川 王騎は、山口祐一郎さんの当たり役だと思っています。この役を演じられる方はほかにいないのではないでしょうか。千尋さんの羌瘣も本当に素晴らしいですし、私のことは置いておいて(笑)、お二人をはじめ、これだけのキャストを集められたことに驚いています。そして、どんな殺陣も、受ける側が素晴らしいからこそ成立するんですよね。その受け手であるアンサンブルのみんなが全力でぶつかる姿に、私自身も鼓舞されています。私は体を動かすのが得意ではないので、なおさら皆さんを尊敬しています。
──最後に代表して、座長お二人からメッセージをお願いします。
高野 いよいよ『キングダムⅡ-継承-』の上演が迫ってまいりました。これから稽古も終盤に入りますが、一日一日、濃密な稽古をコツコツ重ね全員で作品を作り上げていきます。ぜひ劇場で、戦場の熱気を体感してください。お待ちしています。

三浦 前回は冬の上演でしたが、今回は夏ということで、文字どおり熱い夏になる予感がしています。素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんと一緒にこの作品を作れることを、本当に幸せに思っています。本日これから公開稽古がありますが、ここからさらにブラッシュアップされた舞台を劇場で楽しんでいただけたらうれしいです。皆様劇場でお会いしましょう!それでは、恒例のということで、参ります。皆様、ご唱和ください。
「キングダ、(全員で拳を出して)ムー!」ありがとうございました!
その後、アンサンブルメンバーも加わってのフォトセッションが行われ、ここでも全員の顔が見えるように、可動式の階段のセットを組みましょうと山口がリードして、全員参加の迫力ある撮影が実現。全員が着ているTシャツの背中に、『秦の怪鳥』との異名を持つ、山口の王騎のシルエットが描かれていることが、今作を象徴しているのだなと感じるなか、公開稽古がはじまった。



【公開稽古】
披露されたのは信の初陣となる「蛇甘平原の戦い」とその終戦後、龐煖の登場シーン。まず殺陣の段取りを確認し、三浦の信、東の龐煖で場面が披露される。
会見では記者が車座になっていた場所も舞台面となる為、取材陣は譲り合いながらもギリギリの場所を確保。これ以上ない目の前での場面披露がはじまった。



まず、騰(とう)役の石川禅が登場し、前作から今作の幕開けまでの流れが語られる。これが決して長くないなかで、非常にわかりやすい橋渡しになっていて、今作の脚本・笠浦静花にも期待が高まるなか、はじめての、そして天下の大将軍を目指す信にとって憧れの戦場が広がっていく。三浦の表情が実に雄弁で、前作では鮮やかなアクションが鮮烈だった元木が、新たに演じる尾平役で、腰が引けている姿が弱弱しく見えるのに驚かされる。

三浦・信の高い身体能力が更に進化して動きが早いこと、早いこと。石川の言葉通り、それを受けるアンサンブル陣も大活躍で、三浦から思わず「近っ!」と言葉が漏れたほど、取材陣のカメラと至近距離での「俺の名前は信、いつか天下の大将軍になる男だ!」の名乗りが心躍らせる。


なかでも驚かされたのが、羌瘣(きょうかい)役の山本千尋。世界ジュニア中国武術選手権大会で優勝経験を持つ達人で、映像での舞うようなアクションも目にはしていたが、会見などでは決して大柄ではなく、どこかいたずらっ子のような笑顔が印象的な山本が、ひとたび殺陣をはじめた途端、眼光鋭く、一つひとつの殺陣をキメていく様があまりにも鮮やかで、上背まで大きく見えてきたのには目を瞠った。衣装も照明もない稽古場で、これだけの変貌を見せてくれるのだから、舞台ではいかばかりかと胸が躍った。


彼らの戦いぶりを高見で見つめる、王騎の山口と、騰の石川が並び立つことの安心感にもやはり絶大なものがあり、舞台『キングダムⅡ-継承-』の大きな流れが見えてくるよう。山口の温かいまなざしと、王騎独特の台詞回しが作品世界の香りを強烈に発揮する。



そんな戦のあと、信を案じて走り出てきた河了貂役の華の、照れ隠しの強がりとやりあう三浦・信の掛け合いも楽しく、くるくる変わる表情が三浦の信のなかにある天真爛漫さと、戦うことへの天才的な勘をよく表している。

そして、最後に龐煖役東が壇上に現れ、王騎以外は全く眼中にない、龐煖の狂気のような執念を吐露。東の姿の良さはもちろん、身に着けてきた存在感の大きさと同時に、どこかエキセントリックな香りも醸し出す演技力の深まりを発揮して、ひと組目の場面披露が終了。大きな拍手が沸き起こった。



続いて、信を高野、龐煖を章平での同じ場面が披露される。出番を終えた三浦も自席に戻ってきて見つめるなか、石川の演技も二回目とのことで今日の客席である、記者たちに語り掛けるようなセリフにも、既に余裕がある。


そこに登場した高野・信は、前作よりも少し大人になったんだな、がはっきりと感じられる信になっていて、現時点で既にダブルキャストの妙味がより深まっているのを感じる。羌瘣や河了貂とのやりとりもそれぞれ感触が異なり、これはどうしたって両方観ないと、との気持ちが掻き立てられる、見え方が前作以上に異なる信になる予感がどんどん強まった。動きも更にダイナミックになり、真摯な表情が印象的だ。

そして龐煖を章平はまさにラスボス登場の趣が強い、堂々とした佇まいで目を引く。『十二国記』で見せたこれぞ王!の風格が、ダークに染まりながらも保たれていて、こちらのダブルキャストの趣も相当に異なることが予想される。武器の扱いも違っていて、こちらも舞台での登場がどんなものかを早く観たいとの思いが広がった。

終わってみれば数分の場面だったが、凝縮されているドラマや人間模様が非常に奥深く、稽古を見つめる俳優たちの真剣な視線も印象的で、ここから更に深まっていくだろう舞台『キングダムⅡ-継承-』の開幕が待たれる時間だった。


【公演情報】
舞台『キングダムⅡ-継承-』
原作◇ 「キングダム」原 泰久(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
脚本◇笠浦静花
演出◇山田和也
音楽◇KOHTA YAMAMOTO
出演◇信 三浦宏規/高野 洸
羌瘣 山本千尋
龐煖 東 啓介/章平
河了貂 華 優希
尾平 元木聖也
蒙毅 竹内將人
羌象 清水葉月
蒙武 渡辺 大※東京・大阪公演のみ/飯作雄太郎※大阪・福岡公演のみ
摎 大塚千弘
騰 石川 禅
王騎 山口祐一郎
嬴政(声) 小関裕太/牧島 輝
カイネ 森 莉那
尾到 篠崎大悟
趙荘 保土田 充
明部桃子 飯作雄太郎 内海一弥 奥脇大樹 鹿糠友和 粂川暁典
桜木 雅 佐々木駿也 佐藤義夫 寒川祥吾 竹廣隼人 谷颯士 兆平
東川泰千 ドルジ勇大 中内天摩 長嶋拓也 中野高志 中村音心 早川カンナ
藤田 晴 本多剛幸 増田悠那 湊 竜也 森山大志
(※アンサンブルとして出演を予定していた木村和磨は、体調不良のため全公演を休演させていただきます)
●8月9日(日)~9月13日(日)◎東京・東京建物Brillia HALL
公式サイト https://www.tohostage.com/kingdom2/
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ0570-00-7777
全国ツアー
●9月21日(月)~29日(火)◎大阪・新歌舞伎座
●10月6日(火)~13日(火)◎福岡・博多座
製作 東宝
【取材・文・撮影/橘涼香】










